社殿再建へ協賛金つのる

社殿再建へ協賛金募る 世界遺産候補・安満岳の山頂「白山比賣神社」 87年の台風倒壊後、プレハブ仮設 [長崎県]

 来年の世界遺産登録を目指す「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の候補地の一つで、平戸市の最高峰・安満岳。その山頂にある白山比賣(しらやまひめ)神社が来年の開山1300年記念事業の協賛金を募っている。本山貢宮司(43)は「記念大祭の費用と、台風で倒壊しプレハブ仮設のままの社殿再建に充てたい」と協力を呼びかける。

 同神社は全国の白山神社総本宮・白山比〓(しらやまひめ)神社(石川県白山市)の分社で、718(養老2)年に僧の泰澄が安満岳に分霊して開山したのが起こり。かつて、かくれキリシタン信者たちが神社拝殿で拝んだ後、裏の林の中にある「キリシタン祠(ほこら)」(別称・奥の院様)に回って手を合わせていたという。

 山頂の社殿(建面積約40平方メートル)は1987年8月の台風で倒壊し、当時の宮司で本山宮司の祖父久男さん(故人)は同年秋の大祭のために同じ所にプレハブ社殿を建てた。今も拝礼に使っているが、一般市民には「(プレハブは)世界遺産にふさわしいか」という声もある。

 再建場所は未定だが、山頂の現地か、北側のふもとの参道入り口付近の2案がある。建築費は3千万~4千万円程度で、山頂再建なら資材運搬経費がかさみその倍程度の費用がかかる見込み。40戸の氏子は高齢化が進み高額負担は難しいのが実情だという。平戸市は「政教分離原則から再建補助金を出すのは困難で、国の制度活用や史跡指定の手法による支援を検討中。氏子も含めた神社側の方針が固まってから詰めたい」(文化交流課)としている。

 本山宮司は来年4月の春の大祭は開山1300年記念と世界遺産登録祈願を兼ねて開催。かくれキリシタン信者にも参加を呼びかけ、神社の拝礼後、キリシタン祠でオラショ(祈り)を上げてもらう。本山宮司は「安満岳には神道仏教キリシタンの信仰が共存したという史実は、他宗排斥をせず、寛容で懐の深い日本らしい信仰のありようを示していて価値があると思う。今も存続する神社として安満岳の守り手でありたい」と話す。

 安満岳(やすまんだけ) 標高534メートル。神道仏教キリスト教の信仰対象となっている霊山。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一つ「平戸の聖地と集落」の構成資産に春日集落、中江ノ島とともに選ばれている。石を連ねた参道を上りきった山頂には白山比賣神社の石祠、かくれキリシタン信者が「奥の院様」と呼んだキリシタン祠が残り、春日集落や生月島が眺望できる。

※本文中の〓は「くちへん」に「羊」

=2017/08/25付 西日本新聞朝刊=

 https://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/353355/